町田その子さんの「宙ごはん」を読んだ。
好きな本だった。
料理が大切な役割をもつ、
このごろ多いパターンの話ではあるけれど、
「宙」という主人公の女の子の
幼稚園のころから大人になるまで出会うエピソードが
それぞれとてもよかった。
登場人物たちは、家庭のいろんな事情を抱えていて、
それはふつうよりハードなもので、
えっ、と思うようなできごとも起こるのだけれど、
それを苦しい側面から書くより、
そこをくぐり抜けてきた人の、
その中で交わされていく温かな関わりが描かれて、
「宙」の心がどんどん深くなっていく。
私は、人が救われるのが好きなのだと思う。
そして、端から見たら、ひどいと思うようなことも
それぞれ抱えているものがあるのだ、という見方も。
人の行為の奥にあるものを見て、
肯定的に人をとらえている。
「おかえりモネ」が好きなのも、
そこが大切にされているからなんだ。
この本でいちばん気づきになったのは、
「人のために役立ちたい」「力になりたい」と思っても、
自分になにができるかと
途方に暮れた気持ちになったりするけれど、
別にすべての人対象でなくても、
自分だからできる、必要とされる人がいるときに、
頼ってもらえばいいのだ、ということ。
いろんなメッセージが詰まった本だった。
もう1冊、宇佐見りんの「くるまの娘」という本は、
亮ちんに共通するものがあると言ってる人がいたので
読んでみたけど、
こちらは私にはちょっとビターなテイストだった。
文学的傾向の違いかも。